かたりとペンを置く
傍の棚で作業をしていた親友を一度みて、書類に顔を落として、そして決心したようにもう一度顔をあげた
「ホークアイ中尉」
「…なんでしょう？」
視線に気づいては居たのかすんなりと手を止めてコチラを振り返る中尉に、一瞬だけためらうものの、いわなくたって気になって手に付かないだろう、と悩みの種を零した
「ハボック小尉が最近変なのだ」
くてっ、と机に突っ伏して、愚痴るように告げる
いきなりのことに一瞬目を瞬かせた中尉は、首を傾げた
「いつも通りだと思いますが」
「よそよそしい
わざわざ夕飯を弁当に詰めてくれるくせに一緒に食べようと誘っても帰るし･･･前は誘えば食べてくれたのに。」
それに送り迎えの最中の談笑も、視線が合えば零される太陽みたいな笑顔も、まるで始めから無かったみたいにないし、むしろ避けられてるような･･･
「(まぁ、あれだけ意識してれば余所々しくもなるでしょう)
･･･それで？」
彼女には大層あまい中尉は、暖かいマグを差し出しつつ、しゅんと、子供が拗ねてるみたいに、珍しくごにょごにょと言いよどむ彼女を促す
本当は、解らない
なんでこんなもやもやするのか。
なにがこんなに気に食わないのか･･･
マグを傾けて、そっと溜息を吐く。
さみしい、なんて、馬鹿げている、と。
「ブレダ達がハボックに好きなヤツができたって･･･やっぱり、そうよね･･･。
いくら上司でも嫌よね、女と歩いてるの」
(小尉も当分、報われ無いわね)
ぽつりと零す様に呟かれた言葉に、リザは報われない大型犬を思い浮かべて失笑をこぼした
何にも聡い人だけれど、自分に向けられる好意には鈍感なのだから、仕方ないかと。
「…聞いてる？リザ？」
「えぇ。
どうしても、というのなら無理にでも誘えばいいんです、
もしも本当に困っているなら私かロカロの所へ来るでしょうし、仕事に口だしするような人なら諦めるべきですね」
「キツイ事を…」
真顔で告げられた内容を不憫に思いながらも、それが間違いだとは思わない
そういう世界で生きてるのだ･･･仕方ないだろう。
何故か安心したような、様を見ろとダレに思っているのか解らない台詞を心の中で零しながら外へと視線を向ける
「それに大左。岡目八目ですよ」
首を傾げる彼女の傍に、先ほどまとめた書類の束を差し出した
鈍い彼女と、彼女の大型犬の為に発破を掛けるのを忘れずに
「なにが･･･？」
「もうそれは友人とも違うという事です、」
「？」
「今日中にコレ全部、お願いしますね」
さらに解らないという顔をする彼女に、これ以上はもう片方にフェアじゃないから、と話を打ち切る
(自分で考えろということか)
残された上官は、彼女の残した難題と、増えた書類の山に頭を抱えるしかなかった